聞いたこともないような男の喘ぎ声。
身体を流れる汗。
顔についた、精液の匂い。
そんな状態の中、俺は身体をくねらせ、ちんこをしごく。
爆発する俺の欲望。
何もそれをさえぎるものはない。
今までにない、開放感と安心感。
女との変な義務感も、ひょっとしたら、男の誇りも、
その時の俺には無かった。

すぐにいきそうだった。
もう、ちんこの先、寸前まできていた。
ジム男が欲しいと思った。
俺は言った。

ジム男、キスしてくれ。

ジム男は、精液のついた俺の顔に顔を近づけ、
キスしてくれた。
激しいわけじゃないけど、
いっていいぞ、と、俺に言ってるようなエロいキス。
そのキスで、俺はもう限界。
いきそうになる。

唇を離し、また俺が言う。

ちんこ、くれ。

いくとき、
ジム男と一つになりたいと思った。
本気で、ちんこをしゃぶりたかった。

ジム男は俺の顔に横から覆いかぶさるようにして
俺の口にちんこをあてる。
精液のついたジム男のちんこ。
まだ固い。
俺はなんの躊躇もなくそれを咥え、しゃぶる。

俺のちんこをしごく手が早まる。

あー、すっげいやらしい。
もう、だめだ。

俺は、ジム男のちんこを咥えながら、いった。

へんな声を出したと思う。
一人でやってる時とは全然違う声。
女とやってる時には出さない声。
何も抑えず、何も躊躇せず、
ただただ、欲望むき出しで、かっこ悪く出ちゃった声。
たぶん大量に精液が出た。
今までに無い、壮絶な快感。
身体の動きも、いったときの不自然な状態で止まったまま。
余韻が身体中を包む。

でも、ここからいっきに波が引き始めた。

いった後、
ジム男がちんこを俺の口から引き抜き、
俺の身体の上に覆いかぶさり、キスをしてきた。

キスをしている約３０秒間。
最初の１０秒、
夢中でジム男のキスに応える。
途中の１０秒、
飛び散らした精液が気になりだす。
顔にもついてるし。
最後の１０秒、
いつどうやってこのキスをやめようか考える。

顔をずらしてキスを止め、
ジム男を抱いていた手を離し、
俺は一人で立ち上がった。
テーブルのティッシュを取り、
顔や身体を拭く。
何もしゃべらない。
ジム男も無言で立ち上がり、
ティッシュで床を拭く。
剣道のそんきょの姿勢でしゃがむジム男の後ろ姿。
ケツの間から、玉が下がっているのが見えた。
赤みがかってて、毛がはえている。

俺はすぐに目をそらし、
股間の自分の精液もそこそこに、
トランクスをはき、帰り支度。

泊まっていかないのか？

こいつ何言ってんだ。
帰るよ。当たり前だろ。
突然態度の変る俺。
ジム男の戸惑いがよく分る。
ちょっとすまない気も。
でも、俺はかまっていられない。
ってか、ここにいたくない。

服を着ると、裸のジム男を置いて、
俺は一人でジム男の部屋から出た。
何故か急いでいた。
人に見られないように、そそくさと小走りに行く。
駅のホームも、いつもとは反対側の最後尾。
視線を落とし、周りを見ない俺。

明るい電車の中。
空いた車両に座っている普通の人達。
俺は席には座らず、
ずっと立って帰ってきた。
早くシャワーが浴びたい。


鏡の中の俺が聞く。

お前、大丈夫か？

無言で立ちつくす俺。

鏡の中の俺をじっと見ながら、
欲望に身体が支配されてた瞬間を思い出す。
自分がいかにへんだったかを冷静に自覚する。
やってしまったことへの後悔と言い訳。

いや、俺は興味があっただけなんだ。
それを今日実行しただけ。

巧妙な理由付け。

ジム男の誘いに乗って、
ちょっとやりすぎたけど、
でもこれもいい経験だ。

ましてや、自分に対しての、言い逃れ。

あいつがしたいっていうから。
でも、一度やってどんなものか分ったし。
俺はもういい。もうやらない。

自分のダメな部分をさらけ出してしまったような、
そんな気持ち。

欲に負けた?

男への俺の欲望？

俺は、一体、

どうしたんだ。


欲望を果たすと、後悔が始まる。

男同士のセックス。
とても良しとすることはできなかった。

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