でも、
気が付くとジム男と連絡が取れていなかった。

１週間後。
いつもの時間にジムに行ってもあいつは来ていない。
携帯に残した留守電も、
ほんとに残ってるのかな。

夜、何度も携帯にかけてみる。
なんだよ、２コールで留守電かい。
え、直留守！？
電波が通じないってどこだよ！
なんでだよ、なんでかけてこねえんだよ！

家に行ってみるか。
でもそれは嫌だ。
俺だけ惚れてるみたいで、かっこ悪い。
家に行ってやつがいて、
おーどうしたの？って聞かれたらなんて答えるんだ。

２週間後。
いつもの時間のジム。やっぱりあいつはいない。

なぜだ。
なぜいないんだ。

夜の携帯。出ない。すぐ留守電。
伝言はもう残さない。

避けてんのか。
どういうことだ。
じゃ、あれはなんだったんだ。

あせる心。
ずっと手に汗がにじんでいる。
頭の後ろが固くて痛い気がする。
１日１日が長くて、早い。

３週間後。
疲れてきた。
口数が少ない。
笑わない。
失敗ばかり。
オナニーは、２日に１回だけ。

ジムに行くのもたるい。
でも、行くか。
トレーニング、さぼり気味だし。
ったく、むかつく。
もーどうしたんだよ。

いつもより早い時間にジムに着いた。
フロントでカードだしながらロビーにジム男を探す。
でも、いない。

一人で靴脱いで、一人で更衣室に向う。
人が少ない日だった。更衣室には誰もいない。
こんな広かったっけかな。
いつもの場所のロッカーで一人で着替えて、鍵を閉める。

あーあっ、たりー。
両腕を頭上に伸ばし、あくびをしながら大きく背伸びをする俺。

っとそこへ、ジム男が入ってきた。

ぅあっ！

伸びをしたまま固まる俺。

ジム男は俺を見ると、すっげわざとらしく、
「おー、久さしひぶり。」
ってニコ。

頭の右上で、カチンって音がした。

はぁ？
でも俺は愛想笑い。
「よっ。」

ジム男が笑いながら
「どこにいたの？全然気がつかなかった。」

「えーっと、ストレッチコーナー。」
俺は嘘をついた。

話しながらどんどん服を脱ぐジム男。
そして勢いよくロッカーを閉め、さっさとシャワー室に行こうとする。

なんだよ、ちょっと待てよ。
なんか話すことがあんだろうよ！

でもジム男は、
「今日は、まだやるの？」

そして俺は、
「うーん、俺もそろそろ終わろうかな。」
ってまた嘘と愛想笑い。
俺って、なんでだ！

慌てて今着たばかりの服を脱いで、
ジム男の後を追いかける。

シャワー室に入ると、ジム男がシャワーをひと浴びして、
サウナに入るのが見えた。
俺も同じように頭と体を濡らし、サウナに入る。

部屋に入るとムッとした空気が顔にあたった。
オレンジ色の照明。黄色いタオル。

更衣室にも、シャワー室にも、誰もいなかった。
サウナにも、俺達二人だけだった。

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